わかりやすい!商標登録講座

初級編

写真で解説!商標登録とは?

本記事では、商標登録とはそもそも何であるか?をわかりやすく解説するために、
写真を使ってストーリー形式で説明しています。

本記事は商標登録の説明を目的をしているため、種苗法との関係は考慮していません。いずれの登場人物も品種登録していないものとします。
本記事のストーリーはフィクションであり、実在の人物・団体・商標とは一切関係ありません。

二人のりんご農家


商標登録とは?図1

このストーリーの登場人物はAさんとBさんです。
二人はそれぞれ自分の土地を持っており、同じ地方でりんご農家として働いていました。

商標登録とは?図2Aさんのりんごは、独自の農法により、他のりんごよりも甘みが多く、おいしいと農家の間では評判でした。
一方、Bさんのりんごは、特に工夫をせずに育てていたため、味はごく普通でした。

AさんもBさんも農協を通してスーパーマーケットに卸していました。
AさんとBさんのりんごは形も大きさも色もほぼ同じで、見分けがつきません。

Aさんのりんごを地元のスーパーで買った消費者は、その美味しさに感動してもう一度買いたいと思いました。
しかし、どれが美味しいAさんのりんごかわかりませんでした。

ネーミングをつける

商標登録とは?図3

そこで、Aさんは自分で作ったりんごを独自に売り出すために、
『職人りんご』というネーミングをつけました。

 商標登録とは?図4

この狙いは大当たりで、職人りんごはどんどん売れていきました。
消費者も甘くておいしいりんごを買うには、『職人りんご』を買えばよいということがわかりました。
何度でもお目当てのりんごを買うことができ、消費者もとても喜びました。

商標とは?

商標とは商品等の目印となるもの、標識となるものです。
ここでは『職人りんご』というネーミングが商標にあたります。商標は、ネーミングの他にもロゴなどがあります。
この商標があるからこそ、消費者は何度でもお目当ての商品を買うことができるのです。
また、品質がよい、悪いというのも商標を見て判断することがあります。
例えば、ただの白いTシャツであっても有名ブランドのロゴが一つ入っているだけで、どことなく高級感を感じることができるのも商標があるからこそです。

 

 

まねされる

商標登録とは?図5

Aさんの『職人りんご』が売れているのを見たBさんは、Aさんの売れ行きに便乗しよう思いました。
なんと、Bさんも自分のりんごを『職人リンゴ』として売り出したのです。

商標登録とは?図9すると、 Aさんのりんごを買う予定だった消費者の一部が、間違えてBさんのりんごを買っていきました。

Bさんは大喜びです。

しかし、そのせいで、Aさんのりんごの売れ行きが悪くなりました。
しかも、『このりんごあんまり甘くない』との評判も発生し、Aさんのりんごは信用を落としていきました。

そこでAさんは、Bさんにマネするのはやめてくれ!と、交渉します。
しかし、Bさんはこう主張します。

『マネしたつもりはない。
たまたま名前が一緒だっただけだ。』

Aさんのりんごは一部では知られていましたが、一般的に有名と呼べるほどではありませんでした。
残念なことですが、基本的にこの段階では、Bさんの行為は法律違反になりません。
せっかく、他のりんごと区別するために、職人りんごというネーミングをつけたのに、マネをされて区別ができなくなりました。

 

もうまねさせない!

商標登録とは?図6※この商標登録証は実在せず、架空のものです。 

途方に暮れていたAさんは、ある日『商標権』というものを知ります。
それは、ネーミング等を独占的に使用できる権利でした。

商標権を得るためには、 商標登録をすれば良いということもわかりました。
早速、弁理士に頼み商標登録出願をしました。

そして、約6か月後、Aさんの『職人りんご』は無事に商標登録されました。

商標登録とは?

商標登録とは、特許庁に商標を登録することをいいます。
登録をすれば、商標を独占的に使用できる権利である商標権を得ることができます。
商標登録をしてもらうには、商標登録出願をして特許庁の審査を受けなければなりません。
審査結果は通常、約5ヶ月~6ヶ月で通知されます。
登録できる商標には、商品名、サービス名、ロゴなどがあります。
(厳密には、特許庁が商標原簿に商標権の設定登録することを商標登録といいます)

まねをやめさせる

商標登録とは?図7 Aさんの『職人りんご』が無事商標登録された後、AさんはBさんに対して『 職人りんごの名前を使うな!』と言いにいきました。商標登録されていることも伝えました。

 Aさんは、スカッとしました。そして、Aさんが商標登録をしているため、Bさんは今後『職人りんご』の名前では売り出せなくなりました。

それから数か月後、Bさんの職人りんごが市場に出回らなくなり、Aさんの『職人りんご』は売れ行きを取り戻しました。

商標登録の目的とは?①

このように、ビジネスにおいて模倣はつきものです。
Aさんの例は特別なことではなく、現在でも日常的に発生しています。
そこで、これらの模倣から自社のネーミング等を守るためには、商標登録をすることが最も安価で有効です。

商標登録の目的の一つは 、まねさせないためです!

 

 

新しい商品を開発

商標登録とは?図10
Aさんは職人りんごの利益を元手にさらに研究を続けました。
その結果、食感がシャリシャリしておいしいりんごをつくることができました。
そのりんごを『こだわりんご』というネーミングで売り出すことにしました。

このりんごをつくることができたのがあまりにも嬉しくなったAさんは、そのことをカフェのマスターに喋ってしまいました。

それから数か月後。
『こだわりんご』のホームページやパンフレット、旗、パッケージ、チラシができあがりました。
取引先のスーパーマーケットでは手書きのPOPを作ってくれていました。

そして、販売当日。
待望の『こだわりんご』を販売することができました。評判も上々でAさんはご機嫌になりました。

しかし、翌日に一通の手紙が届きます。

商標登録とは?図8

Aさんは、心臓が飛び出しそうなくらいビックリしました。
同じりんご農家のCさんから警告書が届きました。

警告書の内容をよく読んでみると、Cさんが『こだわりんご』で商標登録していることがわかりました。
つまり、『こだわりんご』の権利はCさんにあるのです。

実は、Cさんは、Aさんがカフェのマスターと話しているときに、『こだわりんご』の話を聞いていました。そのため、Aさんより先回りして商標登録を済ませていたのです。
Aさんは販売準備があまりにも忙しすぎたために、商標登録のことをすっかり忘れていました。

他人が思いついたネーミングでも商標登録はできるのか?

他人が思いついたネーミングでも、それが有名でない限り商標登録はできます。
これは、『商標は選択物(せんたくぶつ)である』という考え方からきています。
例えば、アルファベット5文字でネーミングを作ろうと思えば、
文字の組み合わせ方に限りがあります。
そのため、誰かが創作したものではないので、先に思いついた人ではなく、先に出願した人に権利を与えようと国は考えています。
しかし、実際はネーミング次第で売り上げが大きく変わりますので、現実と法律的な解釈には少し乖離(かいり)があるように思えます。

商標登録は早い者勝ちのため、出願はできるだけ早い方が望ましいですし、第三者がいるところで新商品の商品名を話すことは非常に危険なことです。

 

 
膨大な数の変更

商標登録とは?図11

Aさんは仕方なく、商品名を変更にすることにしました。
商品名はあらゆるところに記載されていました。
ホームページやパンフレット、旗、パッケージ、チラシ・・・

手間も時間も、費用も膨大にかかりました。


そして一番つらかったことは、取引先のスーパーマーケットに謝ることでした。
また、手書きのPOPの変更もお願いしなければなりません。

こうしてAさんは商標登録の恐ろしさを身に染みて感じ、今後は同じ失敗を繰り返さないように誓いました。

商標登録の目的とは?②


商標権の最もおそろしいところは、他人から訴えられたとき、商品が全く販売できなくなる場合があるところです。
 これを防ぐには、自分で商標登録をすることが最も有効です。商標登録をしていれば基本的にその商標については訴えられることはありません。

商標登録のもう一つの目的とは、訴えられないためです!