CASE2 商品の中身を表している商標でもあきらめない
今回ご紹介する『あきらめない成功ストーリー』の主役は、
アルファペイント株式会社様です。
お客様について
アルファペイント株式会社様
- 本社は東京。倉敷に事業所設置。平成２１年設立。販売会社として『株式会社アルファ』を有する。
- 遮熱塗料、サビ転換塗料などの高機能塗料の製造。
- 特殊遮熱顔料・超微細セラミックスの複合効果による高性能遮熱塗料「セレクトコートＳ１１０」は、太陽光が熱エネルギーに変わる前に反射、屋根や壁の温度上昇を抑制し、室内環境の改善（＝省エネ・ＣＯ２削減）に寄与。
ご依頼内容
塗料に「Selectcoat（セレクトコート）」というブランド名をつけて販売したいとのご相談を受けました。
このネーミングに思い入れも強く、また、非常にわかりやすい点で大切にされてきたとのことでした。
他社にマネされないように「Selectcoat」について商標権を取りたいというご依頼内容です。
ここが心配でした
Select（セレクト）は、「選び抜かれた、極上の」という意味があります。
coat（コート）は、「塗料」という意味があります。
つまり、Selectcoatは英語で「極上の塗料」という意味とも取れ、内容が非常にわかりやすい商標ですが、わかりやすいために登録ができないことがある点が心配でした。
わかりやすいネーミングは商標登録されにくいことも
商標法では、以下の内容の規定があります。
「商品の性質を直接的にあらわしているネーミングのみでは、登録できない」
例えば、ドーナツに商標「ミルクドーナツ」
『ミルク入りのドーナツ』と商品の原材料（性質）を直接的にあらわしています。この場合は、原則登録できません。
原材料の他にも産地（東京、大阪等）や品質（特別、早い等）等を直接的にあらわすネーミングのみの場合も、原則登録は認められていません。
こういったネーミングは、商品の中身を詳しく説明しなくても、お客様にすぐに商品を理解してもらえます。
そのため、組合せによっては、非常に訴求力の強いネーミングになり、購買意欲を高めることがあります。
誰もが欲しているネーミングのため、独占させることは適当ではないと、国は考えています。
また、こういったネーミングは「わかりやすい」ため、裏を返せば「特徴がない」とも判断されます。
商標は元々「他者と区別するための標識」の役割をしていますので、特徴がないものは他者と区別ができず、商標として認められません。
裏付け調査を行う
「Selectcoat（セレクトコート）」というネーミングを聞いた時、消費者は、「極上の塗料」という意味を感じるのか、それとも意味を感じずに「セレクトコート」という響きだけを感じるのか（一種の造語として受け止めるのか）が問題でした。
「極上の塗料」という意味を感じれば、「Selectcoat（セレクトコート）」は商品の性質を直接的にあらわしているネーミングと判断され、特徴がないため登録は認められません。しかし、一種の造語であれば、特徴があるため登録は認められます。
裏付け調査をした結果、「一種の造語」として受け止める可能性があり、登録可能性があると判断し出願に至りました。
拒絶理由が送られてくる
しかし、特許庁からは「この商標は認められない」と拒絶理由通知書が送られてきました。
これに対して、裏付け調査時に得た証拠や、さらに多くの証拠を集め、すぐに反論の準備をしました。
戦略：16件の証拠を集める
証拠は、特許庁が過去に示した見解や、既に登録されている商標など16件集めました。
職人の戦略
16件の証拠を集める
証拠の一部を紹介します。例えば、リップクリームに「セレクトリップス」というネーミングが登録されていました。
『セレクトリップスがＯＫであればセレクトコートもＯＫではないか？』など、上記のような証拠16件を一つ一つ丁寧に示し、反論する書類を提出しました。
反論が認められ、登録される
一旦特許庁にダメだと言われた商標ですが、反論の結果、登録を勝ち取ることができました。
登録が難しいと言われる商標でも、粘り強く証拠を集めることで、相手を説得することに成功しました。
現在の商標の活用
現在は、セレクトコートに様々なバリエーション（油性下塗り用、水性サビ転換用等）をつけて、高機能の塗料として販売されています。思い入れのある商標を守ることができ、弊所としても嬉しく思います。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。
アルファペイント株式会社様の益々の発展をお祈りしています。
